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  • 2015.08.01 Saturday
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Editing editorials

以前、同門会報に“文献の読み方”と題して次のような文を寄稿した。
 “最近までわが国の医学は全面的に欧米に依存しており、医学書とくに洋書は貴重なものであった。「クレンペラー(といっても若い人達には通じないが)を5回読んだ」などという逸話もあるように書物は少なく、有名教授の講義録なども出版された時代もあった。しかし、昨今では医学書は氾濫しており、選択に苦慮する程である。学生向きの教科書や入門書は通読すればよいが、研究のための文献の読み方には少なからず配慮が必要である。研究時間を無駄な文献読みに使いたくないからである。自分の研究テーマに関係した文献リストや文献コピーをコツコッ集めていた時代から、必要な文献リストはサマリー付きで瞬時に得られる時代となった。「文献学者」、「博学」、「物知り」が学者であった時代は去り、独創的な研究が求められるようになってきた。雑誌の構成は原著、症例報告、総説、論説からなっているものが多い。奪門外の動向や話題は論文のタイトルをみるだけで十分である。少し興味があればキーワード、サマリーに目を通すことになる。自分の専門分野の論文でも真贋を見極めるのは可成りむづかしい。最も簡単な方法は掲載された雑誌のランクに従い、一流の雑誌の論文は一流と考えてよい。三流雑誌に"堀出し物"はまずあり得ない。しかし、同一雑誌でも玉右混交である。論説(editorial)に取り挙げられた論文は評価が高いと考えられる。特に専門外の論文はeditorialを先に目を通してみるのも良い。editorialは論文のレフリーが書いていることが多いが、最近の研究の動向と当該論文の重要性について述べている。雑誌の巻頭を飾る論文も評価が高いといわれているが確証はない。表紙に論文の図を使用している雑誌では、当然"絵になる"ものや、話題性の高い論文から選ばれる。従って、一流雑誌の巻頭に載り、editorial付きで、表紙になったものは最高の論文といえる。原著はタイトル、サマリー、図表の順に目を通すが、方法などは必要がない限り読まなくてよい。序文では何故この研究が行われたのか経緯が判るし、考察では著者の考え方が判る。自分の論文が引用されているか否かは興味があるところであり、どの程度の評価を受けているかも判る。総説(review)の優劣の差は大きい。過去の成績や他人の説の羅列に終始したものは学生のレポートと大差はない。文献学者の総説は自らの経験や成績がないから訴えるものはない。本来、総説は自分の成績を軸として、他の人の成績を交えて書かれるもので、将来の動向を窺う(perspectives)でなければならない。何ら示唆が得られない総説はつまらない。
「備えあれば憂いなし」として文献を読むのは、臨床には必要かもしれないが、研究には全く無駄である。研究機器や研究テクニクを修得したから、「さて、これでできる研究はないか?」というのと似ている。研究テーマや問題提起は文献から生ずるはずがない。臨床から生じたテーマや問題を解決するために必要に迫られて文献を読むのである。「物知り」は研究にはほとんど無意味である。
正しい論文の読み方は良い論文を書くための基本でもある。“
今回の追記
 私の研究歴で大きなステップとなったのは以下の項目であるが、特記すべきいくつかの研究にはeditorialが寄せられている。
  • FHの診断と疫学に関する研究
  • FHの治療に関する研究とくにスタチンの開発
  • ホモFH治療におけるLDL-アフェレーシスの開発
  • CETP欠損症の発見とCETP阻害剤の開発
  • FHの遺伝子解析
  • PCSK9異常症の研究とPCSK9阻害剤の開発
 
 私の研究歴でNewsやEditorial, Comment, Viewsなどニュース性の高い論評に登場したことは少ないし、Review原稿は依頼されたことはあるが、科学ニュースの渦中に出たことはほとんどない。 思い起こすものでは、1981年New Engl J MedのEditorialに引用されたことや、1983年、ScienceのResearch Newsに登場したこと、 2012年New Engl J Medに登場、 2015年にはNature Reviews Endocrinologyの依頼原稿でNews & Viewsに採用されたことである。
 科学ジャーナルも一般新聞紙面と同様にニュース性が重んじられるのは当然で、一時期はエイズが、また最近ではエボラ出血熱が優先的に論文が採択されることは当然であろう。1981年にN Engl J Medに採択された際は、“重要な医学情報を持った論文は5週間以内に世界に情報を発信する必要がある”ので、校正は編集部へ電話するよう指示された。それ程、迅速性が重要視されていたのである。最近のN Engl J Medの編集方針がどうなっているかは知らない。
 1981年、スタチンをヘテロFH患者に投与した成績をN Engl J MedにMabuchi H, Haba T, Tatami R, et al. Effects of an inhibitor of 3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase on serum lipoproteins and ubiquinone-10 levels in patients with familial hypercholesterolemia. N Engl J Med 1981;305:478-82.と発表したが、同誌のEditorialBrown MS, Goldstein JL. “Lowering plasma cholesterol by raising LDL receptors”. N Engl J Med 1981;305:515-7.が掲載された。当時、Brown & Goldsteinは新進気鋭の研究者であり、最も注目される立場にあり、4年後の1985年にはノーベル賞が授与される程であった。
 Brown & Goldsteinは言う“The goal of therapy in familial hypercholesterolemia is to reduce the concentration of LDL in plasma without disrupting cholesterol delivery to cells. The ideal approach is to stimulate the cells to produce more LDL receptors.
   In this issue of the Journal, Mabuchi et al. report a detailed study of compactin’s effects on lipoprotein levels in human beings. They used extremely low doses of compactin, less than one tenth the amount used in the dog studies. Yet they observed a dramatic 29 per cent reduction in plasma LDL levels in subjects with heterozygous familial hypercholesterolemia.(中略)
 Many hurdles must be overcome before compactin or mevinolin can be accepted as a “penicillin” for hypercholesterolemia. No long-term studies of toxicity have been reported in animals or patients. (以下省略)
 その当時のBrown & Goldsteinの心境は2004年の遠藤博士のスタチン発見30周年記念論文集に寄稿されている。論文にはない心情を交えた内容になるのが論説である。 その中で、BrownとGoldsteinは次のように述懐している。
 Our confidence in statins was strongly reinforced when we saw Mabuchi’s 1981 paper in The New Engl Journal of Medicine on the treatment of FH heterozygotes with compactin.[Mabuchi H, et al. New Engl J Med. 305; 305, 1981.] Heterozygotes have one copy of a normal gene for LDL receptors, but this gene is partially suppressed by cholesterol. Compactin relieves this suppression, up-regulating LDL receptors and lowering plasma LDL. We communicated our excitement in the editorial that we were invited to write to accompany Mabuchi’s article, which we entitled “Lowering Plasma Cholesterol by Raising LDL receptors”. Although we were enthusiastic, we cautioned that many hurdles had to be overcome before compactin would be a drug. Among these was the ever-present concern that was not laid to rest until Merck conducted the landmark EXCEL study after the approval of lovastatin.
Brown MS, Goldstein JL. A tribute to Akira Endo, discoverer of a “Penicillin” for cholesterol. Atheroscler Suppl. 2004 Oct;5(3):13-16.
Brown & Goldsteinの興奮とその23年後の心境も書かれており興味深い。
 
 2012年Stein EAらが、健常人、FH、および非FH患者に対するPCSK9モノクローナル抗体の効果を発表した。
 Stein EA, Mellis S, Yancopoulos GD, et al. Effect of a monoclonal antibody to PCSK9 on LDL cholesterol. N Engl J Med 2012;366:1108-18.
この論文に付随してYoung SG & Fong LGがLowering Plasma Cholesterol by Raising LDL Receptors --- Revisited. と題するeditorialが発表された。RevisedではなくRevisitedであることに注意しなければならない。
冒頭に”Thirty-one years ago, Mabuchi and colleagues reported in the Journal that a statin called compactin reduced plasma low-density lipoprotein (LDL) cholesterol levels by 29% in patients with heterozygous familial hypercholesterolemia. This drug inhibits an early step in cholesterol synthesis catalyzed by the enzyme 3-hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A (HMG-CoA) reductase. In an accompanying editorial entitled “Lowering Cholesterol by Raising LDL receptors,” Brown and Goldstein noted that heterozygotes for familial hypercholesterolemia have a deficiency of LDL receptors on cells, resulting in reduced cholesterol uptake by cells and high levels of cholesterol in the plasma.”(中略)
   In their 1981 editorial, Brown and Goldstein concluded that “important lesson” of the compactin studies was that “normal regulatory mechanisms can be exploited to lower plasma LDL.” The PCSK9 story reinforces this paradigm in an emphatic fashion. And although the discovery of PCSK9 is an exciting chapter in the cholesterol story, no one should assume it is the last. For example, the research group of Tontonoz recently identified an intracellular protein, IDOL (inducible degrader of the LDL receptor), that targets LDL receptors for degradation, much like PCSK9. As trials of PCSK9 monoclonal antibodies race ahead in lipid clinics, efforts to identify IDOL inhibitors are probably already under way.
 31年前にスタチンの効果を発表したが、その作用機序に関してBrown & Goldsteinが論評したものである。その作用機序が今回のPCSK9抗体に通じるものがあると評している。Brown & GoldsteinにとってはLDL-Rの合成分解に関して他の因子が関与し、その作用に及ぼす物質がLDL-R増加剤になる可能性を見透かしていたと思われる。
 目下、PCSK9モノクローナル抗体は3剤開発中であるが、いずれも有効であることはたびたびブログで紹介してきた。LDL-C低下率は40〜60%であり、スタチンと併用した場合はさらに20%のLDL-C低下上乗せ効果が期待できる。心血管系疾患のイベントをエンドポイントとした長期安全性と有効性に関する大規模臨床試験も計画されている。
PCSK9阻害剤の開発は爆発的であり、モノクローナル抗体が最も急速な進展を見せており2003年にPCSK9変異によるFHが発見されてから13年前後で、薬剤が発売されようとしている。
ヘテロFHとホモFH例におけるエボロキマブ(AMG145)の効果について図1に示した。当然のことであるが、ヘテロFHに対してPCSK9阻害剤(モノクローナル抗体を含む)が著効を示すが、ホモFH症例では効果が鈍る。ホモFH例では対立遺伝子がともに変異があるため、残存レセプター機能がどの程度あるかにより、薬剤の刺激でどれほど賦活化されるかが決め手となる。今後、FHに対する効果を推定するためにもLDL-レセプター機能を検討することが必須となろう。

この論文がLancetでプリントされる前にオンラインで発表され、多大の反響を呼んでいるわけだが、そのことに関連してNature姉妹誌から原稿依頼があり、News and Viewsの欄を執筆した。Natureの姉妹雑誌は多いが、Nature Reviews Endocrinology (NRE)のインパクトファクターは12.956である。
 Nature Reviews Endocrinologyの依頼内容は
Dear Professor Mabuchi,
As a recognized leader and author in your field, I believe that you would be a key contributor to the quality of Nature Reviews Endocrinology, and so I would like to invite you to write a News & Views FV article on the following 2 original research articles
Raal et al, 上記 and Raal et al, 上記
News & Views will provide a forum in which clinical advances can be communicated and set into context. The articles also aim to discuss the impact new results might have on practical patient care. News & Views are around 1,000 words plus 10 references maximum.
Nature Reviews Endocrinology's current Impact Factor is 12.958 (2013 ISI Journal Citation Reports) and to-date over 58,000 people have registered to receive our electronic Table of Contents every month.
If you accept our invitation, we would hope to receive the first draft of your article by 17 October 2014, after which it will be edited to reinforce the high quality of the journal. I appreciate that this is a short deadline, but we try to keep our articles as timely as possible to provide the most benefit for our readers, and
given the shortness of the article, we do not anticipate it taking a long time to write. (以下省略)
年内は論文も書かなくてもよかろうと考えていた矢先、短い論文とはいえ10日以内の投稿が義務づけられ、パニックに近い状況になった。何とか設定日時をクリアして、online publicationの発表ができ、LancetのRaalらの本論文発行前に出版することができた。論文は丁度2ページとなり、無駄なく印刷され、きれいな論文となった。
 Raalらの論文内容から作図するとヘテロ接合体性FHではLDL-Cは65%減少し、ホモ接合体性FHでは30%しか減少しなかった(下図1)。この効果の差は当然と理解できる。われわれがViewsで述べたようにヘテロFHでは対立遺伝子の片方が変異した遺伝子であるが、他方は正常遺伝子であるため、PCSK9がモノクローナル抗体でブロックされれば正常に発現したLDL-レセプター(LDL-R)が増えることになり、LDL-Cの低下効果は大きい(図1)。ホモFHでは両方とも変異遺伝子であり、PCSK9でLDL-R増加しても機能が回復しないことが予想される。FHに対するPCSK9の効果を検討するために、FH遺伝子の解析、LDL-R機能の判定が重要になると思われる。
 PCSK9モノクローナル抗体に関するeditorialは多いが、我々が直接的または間接的に関係したものは限定されるが、非常に興味深い。
 
 動脈硬化症とコレステロールに関するドグマは“LDL-Cは悪玉コレステロール、HDL-Cは善玉コレステロール”である。LDL-Cを下げるためにはHMGCo-A還元酵素阻害剤(スタチン)とPCSK9阻害剤(PCSK9モノクローナル抗体)があるが、残余リスクの対策はHDL-C増加薬の開発である。著明な高HDL-C血症を示す症例がcholesteryl-ester transfer protein (CETP)欠損症であることを発見したのは我々である。この疾患では血中CETPは欠損し、HDL-Cは100〜200mg/dlに上昇し、動脈硬化性疾患は少ないと発表した。我々の研究成果が発端となり、CETP阻害剤の開発が急速に進むこととなった。先陣を切ったのはファイザーのトルセトラピブであった。CETP欠損症と同様、劇的なHDL-Cの増加とLDL-Cの低下があり、これこそ理想的なコレステロール治療薬と期待された。
 
 CETP欠損症とCETP阻害剤の開発
Koizumi J, Inazu A, Yagi K, et al. Serum lipoprotein lipid concentration and composition in homozygous and heterozygous patients with cholesteryl ester transfer protein deficiency. Atherosclerosis. 90(2-3):189-96, 1991). CETP欠損症を発見し、その遺伝子異常を発表したのは我々であるが(Brown ML, Inazu A, Hesler CB, et al. Molecular basis of lipid transfer protein deficiency in a family with increased high-density lipoproteins.
Nature. 342(6248):448-51,1989). いずれもEditorialがなかったのは、未だ注目度が低く、話題性もなかったと思われる。むしろ、薬剤開発の行き詰まりがあってから、注目度が高まったのは皮肉なことであった。注目度ががぜん高まったのはいくつかのCETP阻害剤が挫折してからである。
 ファイザー社の社長Kindler JB氏は2006年12月1日新しい心臓薬としてCETP阻害剤(トルセトラピブ)を米国FDAへ申請すると2006年12月1日プレスインタービューで発表した。わずか2日後、この薬剤の開発を中止するとニューヨークタイムズに発表し、学会は勿論、製薬会社などでもショックをもたらすこととなり、CETP阻害剤開発の善し悪しが論議されることとなった。
 CETP阻害剤に関して、多くのeditorialが発表される中、Tall ARが精力的に論議を展開していたが、我々の共同研究者であり、ここでは省略する。別の機会にゆずるがCETP阻害剤の将来性を硬く信じており、今後とも注意深く見ていかなくてはならない。コレステロール治療薬に関する総説を纏めることも考えている。
 

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